3. 実数直線上の積分
実数値関数 f : \mathbb{R} \to \mathbb{R} の積分を考えたいと思います。
しかし、いくつかの理由から、まずは無限大の値を許す非負関数 f : \mathbb{R} \to [0, \infty] の積分から始めましょう。
ルベーグ積分の重要なアイディアの一つは、値域に注目することです。
たとえば、f が \{0, 2, 3\} の値しか取らないとわかっているとします。そのとき、f の積分はどのように定義されるべきでしょうか。
この場合、f の積分は
2 \cdot m(f^{-1}\{2\}) + 3 \cdot m(f^{-1}\{3\})
のように、値域の各値に対して、その値を取る点の集合の測度をその値で重み付けして足し合わせたものになるはずです。
このような f は 単関数 と呼ばれ、その積分は非常にわかりやすい形になります。
この値を考えるには f^{-1}\{2\} と f^{-1}\{3\} が可測集合である必要がありますが、重要なのは、それらの集合の正確な形を知る必要はないということです。
測度さえわかれば十分です。これが、定義域よりも値域に着目するということの意味です。
もちろん、一般の f が有限個の値しか取らないとは限りません。しかし、一般の 可測関数 は、そのような単関数の単調増大列で近似できます。
たとえば、非負有理数を q_0, q_1, \dots のように並べ、f の n 番目の近似を、n 番目までに現れた有理数だけを値に持つ単関数として作ることができます。
有理数は実数の中で稠密なので、これは十分によい近似列になります。
このようにして定義されたルベーグ積分は、いくつかの重要な収束定理を満たします。 ここでは、単調収束定理、ファトゥの補題、優収束定理 と呼ばれる三つの収束定理を紹介します。